インプラントを入れるとMRI検査が受けられないって本当?
インプラントが入っていてもMRI検査は受けられる?
安全性や注意点を歯科医師がわかりやすく解説

「インプラント治療を検討しているけれど、将来もし大きな病気をした時にMRI検査が受けられなくなると困る……」
「すでにインプラントが入っているけれど、人間ドックのMRI診断で何かトラブルが起きないか不安」
当院へご相談に来られる患者様から、このようなお声をいただくことがよくあります。MRI検査は、脳や内臓など全身の疾患を早期発見するために欠かせない重要な精密検査です。その検査が歯科治療のせいで受けられなくなるかもしれないという不安は、健康を大切に考える方にとって非常に切実な問題だと思います。
巷では「インプラントは金属だからMRIに反応して火傷をする」「インプラントが磁石で引き飛ばされる」といった恐ろしい噂が流れることもありますが、どうぞご安心ください。結論から申し上げますと、一般的なインプラントが入っていても、ほとんどのケースでMRI検査を安全に受けることができます。
しかし、なぜこのような噂が広まったのか、そして、ごく稀に注意が必要なケースとはどのようなものなのか。この記事では、インプラントとMRIの関係について、私自身の知見に基づき、専門用語をできるだけ分かりやすく噛み砕いて解説します。この記事を読み終える頃には、将来の健康診断に対する不安が解消され、安心してインプラント治療を検討いただけるようになっているはずです。
目次
1. MRI検査の仕組みと「金属」が問題視される理由

まず、なぜ医療現場で「インプラントとMRI」の問題が語られるのか、その背景にあるMRIの仕組みについてお話しします。MRI(磁気共鳴画像法)は、その名の通り非常に強力な「磁石」と「電波」を利用して、体内の水分に反応させて断面図を撮影する検査です。
検査室に入ると、そこには巨大で強力な磁場が発生しています。そのため、磁石に吸い寄せられる性質を持つ金属(強磁性体)を身につけていると、検査装置に引き寄せられて飛んでいってしまったり、金属が急激に発熱して火傷を負ったりする危険があります。また、金属が磁場を乱すことで、診断に必要な画像が真っ黒に歪んでしまうこともあります。
このような理由から、MRI検査の前には必ず「体内に金属が入っていませんか?」という厳しい問診が行われるのです。歯科治療においても、昔から使われている銀歯や入れ歯のバネなどには金属が含まれているため、インプラントも同様に「危ない金属なのではないか」というイメージが定着してしまったのだと考えられます。
2. 結論:インプラントが入っていてもMRI検査は「原則可能」
改めて結論を申し上げます。歯科で使用される一般的なデンタルインプラントが原因で、MRI検査そのものが拒否されることはまずありません。
インプラントは顎の骨の中に埋め込まれる「人工歯根」ですが、これがMRIの強力な磁場に反応して移動したり、熱を発したりして周囲の組織を傷つける心配は、現在の標準的な治療においては皆無と言っていいでしょう。実際、私自身も多くのインプラント治療を行ってきましたが、その後の人間ドックや精密検査でトラブルが起きたという報告は一度も受けておりません。
ただし、ここで「原則」と申し上げたのは、一部の特殊な装置や古いタイプの歯科材料においては、事前の確認が必要な場合があるからです。その点については、後ほど詳しく解説いたします。
3. なぜインプラントはMRIに反応しないのか?材質から紐解く安全性

では、なぜインプラントは大丈夫なのでしょうか。その秘密はインプラントの「材質」にあります。
現在、世界中で広く普及しているインプラントの多くは「純チタン」あるいは「チタン合金」で作られています。チタンという金属は、磁石に反応しない「非磁性体(あるいは常磁性体)」という性質を持っています。磁石を近づけてもくっつかず、強力な磁場の中に置かれても磁気を帯びることがありません。
また、チタンは生体親和性が非常に高く、整形外科の分野でも人工関節や骨折の固定用プレートとして広く使用されている素材です。これらの手術を受けた方がMRIを受けられるのと同様に、チタン製のインプラントも安全性が確立されています。
院長からの分かりやすい補足
難しい言葉で言うと「磁化率(じかりつ)」という指標がありますが、チタンはこの値が極めて低いため、MRIの磁場に影響を与えにくいのです。つまり、磁石に対して「無関心」な金属であると言えます。
さらに、最近では「ジルコニア」というセラミックの一種で作られたインプラントも登場しています。ジルコニアは金属ですらないため、磁性の問題は一切ありません。当院でも、金属アレルギーが心配な方や、より審美性を求める方にはジルコニアを選択肢としてご提案することがありますが、これも当然MRI検査への影響はありません。
4. 【重要】MRI検査が受けられない、または注意が必要な「例外」のケース

ほとんどのインプラントが安全である一方で、歯科医師として必ずお伝えしておかなければならない「注意が必要なケース」があります。それは、インプラントと入れ歯を磁石で固定する「磁性アタッチメント(インプラントオーバーデンチャー)」を使用している場合です。
これは、インプラントの頭の部分と入れ歯の裏側に小さな磁石を取り付け、磁力で入れ歯をガチッと固定する治療法です。非常に便利な方法なのですが、この磁石パーツが口の中に残っている状態でMRIを受けると、以下の問題が発生します。
- 磁石が装置の磁場を大きく乱し、画像が著しく歪む
- 磁石の磁力が弱まってしまい、入れ歯の固定力が落ちる
- (非常に稀ですが)発熱の原因になる可能性がある
もし、ご自身が「磁石でくっつけるタイプの入れ歯」を使っている場合は、MRI検査の前に必ず歯科医師または放射線技師に申し出る必要があります。多くの場合、磁石のパーツは取り外しが可能であったり、検査時だけ外す処置をしたりすることで対応できます。しかし、これを知らずに検査を受けてしまうと、正しい診断が下せないだけでなく、高価な治療装置を傷めてしまうことになりかねません。
5. MRI画像への「アーチファクト(画像の乱れ)」とその影響について
「安全性」の問題とは別に、「診断の質」という点についても触れておきましょう。
たとえチタン製のインプラントであっても、金属である以上、撮影した画像に「アーチファクト」と呼ばれるノイズが生じることがあります。これは、金属の周りの画像が黒く抜けたり、歪んだりして見える現象です。
特にお顔周り、例えば脳の検査や顎関節、副鼻腔などの撮影をする場合、インプラントに近い部位には若干のノイズが入る可能性があります。しかし、近年のMRI装置の進化や撮影技術の向上(ノイズを低減するプログラムなど)により、診断に支障をきたすほどの大きな乱れが生じることは少なくなっています。
また、腹部や腰、足の検査であれば、お口の中にあるインプラントが画像に影響を及ぼすことはまずありません。医師が「頭部の微細な血管をどうしても詳しく見たい」というような特殊なケースを除けば、過度に心配する必要はないでしょう。
6. インプラント治療を受けた方がMRI検査を受ける際の3つのステップ
将来、皆様が安心してMRI検査を受けられるように、当院で推奨している3つのステップをご紹介します。
ステップ①:自分のインプラントの種類を把握しておく
インプラント治療を終えた際、歯科医院から「インプラントカード(メーカー名や品番が記載されたもの)」を渡されるはずです。これには使用した材質が明記されています。これを保管しておき、MRI検査の問診時に提示できるようにしておくと非常にスムーズです。
ステップ②:検査前の問診で必ず申告する
「インプラントが入っていますが、材質はチタンです」と一言添えるだけで、放射線技師の方は安心して検査の準備ができます。何も言わずに後から画像が乱れているのが見つかるよりも、事前に伝えておく方が、撮影設定を調整してもらえるなどメリットが大きいです。
ステップ③:かかりつけの歯科医師に相談する
もし検診などで「近々MRIを撮る予定がある」と分かっている場合は、事前に当院へご相談ください。磁石パーツの有無の確認はもちろん、必要であれば医科の先生宛に「当院で使用したインプラントの材質に関する情報提供書」を作成することも可能です。
7. 院長の視点:全身の健康を守るための「歯科と医科の連携」の重要性
私は、歯科治療は単に「歯を治す場所」ではなく、「全身の健康を支える場所」であるべきだと考えています。
インプラントは、失った歯を補い、しっかり噛める喜びを取り戻すための素晴らしい治療です。しかし、それが原因で他の医療に支障をきたしては本末転倒です。だからこそ当院では、インプラント治療を行う前に、患者様の既往歴や将来的な健康への考え方をしっかりとお伺いします。
「将来、脳ドックを定期的に受ける予定がある」「心臓のペースメーカーを入れる可能性がある」といった情報を共有していただくことで、私たちはMRIへの影響を最小限に抑える設計や、最適な材質の選択が可能になります。歯科と医科がしっかりと連携し、情報共有を行うことこそが、患者様のQOL(生活の質)を長期的に守る唯一の道だと確信しています。
また、インプラントだけでなく、被せ物の種類や土台の材質についても、できるだけ金属を使わない「メタルフリー治療」を推進しています。これはMRI対策だけでなく、金属アレルギーの予防や、見た目の自然さ、歯ぐきの変色防止など、多くのメリットを患者様にもたらします。
よくあるご質問
8. まとめ:正しい知識を持って、安心できる歯科治療を

「インプラントを入れるとMRI検査が受けられない」というのは、多くの場合、誤解です。チタン製の一般的なインプラントであれば、磁場に反応することなく、安全に検査を受けていただけます。
大切なのは、「どのような材質のインプラントが入っているか」を正確に把握し、必要に応じて医療機関同士で情報を共有することです。当院では、治療して終わりではなく、その後の患者様の人生に寄り添い、全身の健康管理までを見据えた歯科医療を提供することを約束します。
もし、インプラントとMRIの関係でまだ解消されない不安があったり、ご自身の受けている治療内容について確認したいことがあったりしましたら、どうぞお気軽にご相談ください。専門家として、科学的根拠に基づいた正確な情報をお伝えし、納得のいくまで丁寧にご説明させていただきます。
埼玉県越谷市でインプラント治療やMRI検査への影響についてのご相談なら、南越谷ピアシティ歯科・矯正歯科へお任せください。あなたの健康な未来を、お口の中からサポートさせていただきます。
監修/南越谷ピアシティ歯科・矯正歯科 理事長 片桐(坂場)雄司
日本臨床歯科口腔インプラント評価機構 認定医
日本口腔インプラント学会 所属/日本メタルフリー歯科学会 所属/ドライマウス研究会 所属
※本記事は、南越谷ピアシティ歯科・矯正歯科 理事長 片桐(坂場)雄司先生が監修しています。
▶ 経歴・資格を見る
経歴
- アメリカ High School卒業
- アメリカ Snow college入学
- 2006年 日本大学松戸歯学部卒業
- 2006年 日本大学松戸歯学部付属病院勤務
- 2007年 大手町ファースト歯科勤務
- 2008年 高橋歯科クリニック勤務
- 2009年 第二高橋歯科クリニック 院長
- 2011年 亀有クリニック歯科 院長
- 2013年 ホワイトエッセンス ホワイトデンタルクリニック錦糸町 開院
- 2014年 医療法人社団文成会 設立
- 2020年 新越谷駅ビルそうごう歯科 新越谷ヴァリエ院 開院
- 2021年 南越谷ピアシティ歯科・矯正歯科 開院
所属学会・資格
- 日本口腔インプラント学会 所属
- 日本メタルフリー歯科学会 所属
- ドライマウス研究会 所属
- 日本臨床歯科口腔インプラント評価機構 認定医
